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平成23年度 卒業式

平成24年3月1日に、卒業式が行われました。その際の校長先生のお話です。


千葉敬愛高等学校
校長  須田 繁

春の到来を感じる佳き日、本日ここに、多くのご来賓の方々のご臨席を賜り、多数の保護者の皆様ご列席の下、千葉敬愛高等学校第84回卒業証書授与式を挙行できますことは、私どもにとりましてこの上なく大きな喜びとするところであり、厚く御礼申し上げます。

 ただいま卒業証書を授与されました365名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。皆さんの輝かしい門出を心から祝福いたします。皆さんは、今、過ぎ去りし日々を振り返り、感慨に浸っていることと思います。ある意味、皆さんにとって、この3年間は波乱の3年間であったと思います。1年次には、世界中で新型インフルエンザが猛威を振るい、本校でも、学級閉鎖や学年閉鎖を余儀なくされました。2学期の始業式は、感染拡大防止の観点から、校内放送による各教室での始業式となりました。また、皆さんが楽しみにしていた文化祭は直前になって中止せざるを得ませんでした。このため、皆さんは、上級生として1年生を指導するに当たっても、自分たちが経験していないだけに戸惑いも多かったことと思います。
 2年次末の3月11日には、あの東日本大震災が発生しました。当日は、夜遅くまで食堂で待機する者や学校に泊まることになった生徒もおりました。その後、交通機関の遮断、不通に伴い、学校は臨時休業が続き、終業式を含め年度末の各種行事は変則的な形で行わざるを得ませんでした。このように、波乱・混乱ぶくみの3年間でありましたが、皆さんはよく頑張りました。

 先程、長戸路賞等を受賞された皆さん、そしてまた、三ヵ年間皆勤或いは精勤の皆さんは、特によく頑張ったと思います。皆さんの頑張りに改めて敬意を表します。
 
今日のこの卒業の喜びは、皆さんお一人お一人の精進努力の結果ではありますが、お父さん、お母さんをはじめ、ご家族の方々、小中学校の先生方など、物心両面にわたり支援してくださった方々のお蔭でもあります。これらの方々への報恩感謝の気持ちも忘れないでください。

 さて、卒業は人生の新たな出発でもあります。明日からは、皆さんの進む道はそれぞれ異なりますが、目指す目標に向かって、自分の頭で考え、自分の足で立ち、自分の力で人生を切り開いて行って欲しいと思います。

 皆さんを取り巻く社会は、日々激しく変化しております。目をそらすことなく現実を直視してください。国内にあっては、先の東日本大震災やタイの大洪水が影響しているのかもしれませんが、長引く円高も手伝い、日本経済は低迷し、昨年は31年ぶりに貿易赤字を記録したとのことで、日本経済の先行き不透明感は一層強まってきているように思われます。また、虐待やいじめ、さらにはオレオレ詐欺に代表される、恥を忘れた拝金主義など、人の命や心を軽んじる風潮は一向に改まりません。
 目を海外に転じると、ギリシャに端を発した財政危機はヨーロッパ全体に広がり、「アラブの春」と言われた民主化運動の一方で、シリアのアサド政権による反体制派側への攻撃は激化の一途を辿っております。これに対して、国際社会は、現在のところ国連を含め、これといった決定的な解決策を見出せぬままにおり、焦燥感に駆られる日々が続いております。また、イラン情勢における緊張の度合いも一層高まってきております。

このように混沌とした状況にはありますが、人類は必ずや、様々な困難を乗り越えることができると信じております。今朝の新聞報道によりますと、「米朝、ウラン濃縮停止合意」とあります。見守りたいと思います。

 日本人にとって明るいニュースもあります。サッカーの「なでしこジャパン」やスキーの「高梨沙羅さん」。つい最近では、ローザンヌ国際バレエコンクールで高校2年生の「菅井円加(すがい まどか)」さんが、世界を相手に堂々と戦い、優勝をいたしました。
このローザンヌ国際バレエコンクールは、15歳から18歳の男女を対象にした新進ダンサーの世界的登竜門で、DVDによる審査を経て、19カ国から79人がスイスのローザンヌに集まり、選び抜かれた21人だけが決勝に臨むことができたということです。この21人の中に日本人が、男性1人、女性4人計5人、即ち、ほぼ4人に一人は日本人であったということで、これは一種の驚きであります。ある専門家は「これは日本人のまじめさ、勤勉さの表れだ」と語っておりました。
最近この日本人のまじめさ、勤勉さがやや揺らいできているように思うのは私一人でありましょうか。我々はこのまじめさ、勤勉さというものをもっともっと大事にしなければいけないと思います

そこで、卒業生の皆さんの新たなる門出に際し、一点お話しします。それは、「敬天愛人の心」を大切にし、「諦めることなく」何事もひたむきに努力して欲しいということであります。
ある人が言っておりました。「『できない』と思ったら、きっとできない。成功を願った者だけが成功する。すべては人の心がきめるのだ」と。似たようことを表すのに、「限定は否定である」という言葉があります。自分の力を限定して考えてしまうことは、自分の可能性を否定することにつながります。他人がどう思うと、自分だけは自分の可能性を信じて、夢を大きく持ち、倒れても倒れても、挫けず立ち上がり、夢に向かって積極的に取り組むという「チャレンジ精神」持ち続けて欲しいと願っております。

皆さんはこれからの長い人生において、幾多の困難や誘惑に遭遇することと思いますが、その時は、誠心誠意、事に当たっていただきたいと思います。その姿勢が、どの社会に踏み込んでいっても「なくてはならない人間」として愛され、尊敬され、信頼されることになるからであります。たとえ、不器用であっても、誠実に、ひたむきに努力する人間であって欲しいのであります。

卒業生の皆さん、自分は長い歴史と素晴らしい伝統を有する千葉敬愛高等学校で教育を受けたのだという自信と誇りを持って、「敬天愛人」の心を大切に、自分の選んだ道を、胸を張って、迷わず、着実に前進されるよう期待してやみません。

保護者の皆様に申し上げます。お子様方はこのように立派に成長され、本日めでたく千葉敬愛高等学校を卒業してまいります。保護者の皆様には、今、お子様の立派に成長された姿を目の当たりにして、感慨も一入と存じます。ひたすらに我が子の無事な成長を願いつつ、骨身惜しまず注いでこられた無限の愛情とご労苦が、今、卒業という形で結ばれたわけであります。お喜びの程お察しいたし、心からお祝いを申し上げます。長い間、本校の教育方針にご理解ご協力をいただくとともに、物心両面にわたるご支援を賜りましたことに対し、厚く御礼申し上げます。本当に有難うございました。

結びに、巣立ち行く卒業生の前途に幸多かれと祈念し、国文学者・折口信夫(おりぐちしのぶ)の歌を卒業生の皆様に贈り、式辞といたします。

「桜の花 ちりじりにしも わかれ行く 
遠きひとりと  君もなりなむ」

平成二十四年三月一日
千葉敬愛高等学校長 須田 繁