終業式に代えて

 新型コロナウイルスの影響で3月2日から臨時休校となりましたが、生徒の皆さんはいかがお過ごしですか。不要不急の外出を避け自宅で多くの時間を過ごさざるを得ない状況が続き、なんともやるせない日々を送っているのではないかと思います。卒業式も来賓や保護者の方々には参加をご遠慮いただき、各HRで放送による異例の式典となりましたが、皆さんの先輩たちは、そうした状況をしっかりと受け止めてくれ、晴れやかに本校を巣立っていきました。入学式についても同様の方法で実施する予定です。また、終業式は中止となり、始業式についても学年別に各教室において放送によることを予定しています。春の全国選抜大会に出場が決まっていたソフトボール部やバトミントン部も大会が中止となり、残念でなりません。しかしながら、この新型ウイルスの脅威は今も収まる気配はなく、全世界的に広がりを見せています。私たち人類は、この見えない敵としばらくの間戦い続けなければなりません。でも、こんなときこそ明るく前向きに未来を見据えて今できることに取り組むことが必要です。そう言われても何をすれば良いのか解らないという人もいるでしょう。そんな人への私のおすすめは、やはり読書です。全国学校図書館協議会の調査によると、1ヶ月当たりの読書冊数は、小学生で11.4冊、中学生が4.2冊、なんと高校生は1.4冊ということで、日本の高校生は極端に読書をしていません。高校生が読書をしない理由は、他の活動等で時間がなかったから、他にしたいことがあったから、普段から本を読む習慣がないといったことが多くを占めていたとのこと。英国サセックス大学の研究によると、たった6分間の読書でストレスレベルが約60%まで低下。そのストレス解消効果は「音楽・散歩・お茶・ゲーム」などよりはるかに大きなものでした。また、文部科学省の調査によると、「読書好き」な生徒は「どの学科でも成績が高い」ことがわかっています。読書が学力アップに「間接的に影響している」のだそうです。さらにイエール大学の研究によれば、本を読む人は本を読まない人に比べて、なんと「約2年間長生きする」そうです。こうしたこと以外にも様々な効果が読書にはあると言われています。時には友として、時には教養を深め、時にはあらたな発見をさせてくれます。本通じて「人生の謎を解く鍵」を得ているような気がします。
 とりあえず何か読んで見るかと思った人に、先生からとっておきの1冊を紹介したいと思います。それは、原田マハの「生きるぼくら」です。いじめが原因で引きこもりとなった母子家庭の青年が、ついに母親にも見捨てられ、しかたなく蓼科にある父方の祖母の家に行くことになるのですが、そこには認知症の祖母と対人恐怖症の少女が暮らしていました。こうして奇妙な3人での生活が始まるのですが、まるで現代社会の課題を一家族のなかに凝縮したような話で、いろいろと考えさせられる場面があります。ところが、意外や意外、涙あり笑いあり感動ありと、読み終わった後に気分が晴れやかになり元気をいただいた一冊です。どの学校でも、学校へ通いたくないという生徒はいます。また家庭では、認知症や介護と言った話題もよく耳にします。こうした問題に直面すると人はどうしてもネガティブになりがちです。でもネガティブな発想で対処していてもおそらくは何も解決はしません。それぞれ深刻な問題であり、専門家と連携しながら慎重な対応をしなければならないのですが、すぐに解決できる問題でもないのです。ただ一つ言えることは、「それでも生きていてほしい、生き続けてもらいたい」ということ。先生はこの本を通じて、改めて生きることのすばらしさについて感じることができました。是非皆さんにも読んでもらいたい。
 これからまだまだ新型コロナウイルスとの戦いは続くと思いますが、こんなときこそ、多くの本に触れ、気持ちを切り替えて、充実した時間を過ごしてほしいと思います。

校長 大森 英一